ながとのふるさとの味を求めて、地域の方々にお話を聞いて回る「ながと郷土料理探検隊」。記念すべき第1回目では、青海島・通(かよい)地区のお母さんたちの集まり「むつみ会」の皆さんにお話を聞いてみました。かつての沿岸捕鯨の基地としても知られる漁師町では、どんな食文化が根付いているのか? 全3回の大ボリュームでお届けします!
(取材:村尾悦郎)
■通編:第2回「季節の食材&きずし」の記事はこちら
■通編:第3回「番外・通とむつみ会の今」の記事はこちら
今回、お話を聞かせてくれた方々
「むつみ会」は、地域のボランティア活動を行なっている、通のお母さんたちの集まりです。
インタビュー
■通といえば…くじらの話
―早速ですが、通ならではの食材を教えてください。

まあ、通といえば、まずくじらやね。

先日ね、通に設置されている定置網にくじらが入りました。6mのくじらが1匹です。
―通には定置網が設置されているんですね。

そうなんよ。くじらは沖合で捌いたって聞いたけど?

そう。今はね、船のデッキがまっすぐになっちょるからできるのよ。この間、「くじらの配給がある」って電話がかかってきて。それでもらいに行きましたよ。
―配給? 捕れたくじらが配給されるんですか?

定置網で獲れたものはね、定置網の組合員に配るの。
―ああ、組合が組織されていて、組合員のみなさんに配られるということですね。捕れたものがその都度配給されるのでしょうか?

くじらが捕れた時は大体配給があるよね。

そうそう。漁に出て、くじらを獲るのは法的にダメなんだけれども、定置網にほかの魚と一緒に入った分については水揚げできるの(※)。
(※)現在、定置網にかかった一部の種類のくじら(ミンククジラ、イワシクジラを含む国際捕鯨委員会〔IWC〕の指定種)については有効利用が認められています。詳しくは水産庁のHPをご確認ください。
―そうなんですね。

昔はなんぼ網にかかっても水揚げするのもダメやったけどね、ある時期から網にかかったものについては水揚げしてもよくなったから、通で捕れたくじらが食べられるようになったほ。
―そういったいきさつがあるんですね。

くじらの料理と言えば以前ね、農林水産省の「立ち上がる農山漁村」事業(※)に通の取り組みで応募して、見事認定を受けたことがあるんやけど。そこでくじら料理も紹介したことがあるんよ。

竜田揚げやら南蛮煮やら?

そう。くじらの量がどのぐらいで、調味料がなんぼぐらいとかね。そねぇなことをやったことがあるんです。
―そのレシピ、後で見させてもらってもいいですか?

ええよええよ。くじら料理っていうても、今言われたように竜田揚げやら南蛮煮やらいろいろあるんやけど。特に「南蛮煮」っちゅうそは通独自の料理やと思うね。
―そうですね。「アジの南蛮漬け」はよく聞きますが、南蛮“煮”は初めて聞きました。どんな料理なんでしょう?

くじらの味噌煮のことなんです。

それで、筑前煮ってあるでしょう。あれの鶏肉の代わりにくじらが入る感じですよ。
―ああなるほど。ちょっとイメージが掴めてきました。

筑前煮は砂糖醤油だけど、南蛮煮は味噌で味をつけるの。
―それが通の家庭の味なんですね。

そう。家によって使う味噌が違うみたいだけどね。白味噌とか合わせ味噌とか、赤味噌をちょっと混ぜたりとか。

くじらの皮はね、味噌味がまたおいしいんよ。

▲くじらの南蛮煮

昔はね、皮付きのくじら肉もそこそこの値段で売られてたけど、今だとものすごく高いのよ!

今は高級品やからね~(笑)
―今、上げてもらったくじら料理は竜田揚げと南蛮煮ですが、その他には何かありますか?

よくするのは、2月の節分にね、くじらの肉ですき焼きをします。
―え!? 節分にくじらのすき焼きですか?

節分は「大きいもの」を食べる習慣があるでしょう。
―あ、なるほど。それでくじらなんですね。

昔は牛肉とかが中々手に入らん時代やから、くじらの肉をよく食べてたんよ。

やりますよね。くじらの肉ですき焼き。

ネギをたっぷり入れてね。

そう、ネギと一緒に食べるとおいしいんよ!