「虎屋『鬼の棒』に迫る」後編、大将と若旦那へのインタビューの様子をお届けします。屋外で行なわれていたという昔の「鬼の棒」制作の風景や、現代の「鬼の棒」事情についても話を聞くことができました。(「鬼の棒」製造工程を紹介した前編はこちら)
取材/撮影:村尾悦郎
虎屋さんインタビュー
―この「鬼の棒」ですが、子供のころ、幼稚園で配られる節分のお菓子としてすごく楽しみにしてました。

そうかね。昔は幼稚園とかにも出しよったし、病院とかにも出しよったよ。

今は「ベタベタするから」ってそういった所に出すのは少なくなってますね(笑)
―市内で「鬼の棒」を作られているのは現在では虎屋さんだけですか?

うん、そうやし、今もう西日本でウチだけよ。
―えっ そうなんですか?

はい。作られなくなって、他の町からもウチにお願いが来ることもあります。
―そんなにレアなお菓子なんですね。

レアよね(笑) 宇部とかにも送ったりしますよ。
―送る場所で一番遠いところはどこですか?

でも、宇部が一番遠いかな? 結構いろんなところから依頼があるんですけど、ウチも作れる本数に限りがあるので、申し訳ないけどお断りすることもあります。
―そんな「鬼の棒事情」があったんですね。ちなみに虎屋さんでは一日で何本ぐらい作られるんですか?

普通のサイズ(30cmほど)で200~300本くらいですかね。

1m以上の大きいサイズだと10本ちょいぐらいかな。

▲この時期、虎屋さんには特別製の大きな「鬼の棒」が置かれている
―「鬼の棒」はこの時期以外では作られないんですか?

うん、寒(の時期)じゃないと棒にならんの。あったかいと飴に粘り気があるけぇ手にくっつくし(笑)
―寒い時期でないと溶けてしまうと。

そう、溶けるし、形がだれるの。
―製造作業の中でも、力強く飴を練っている様子が印象的でしたが、同時に大変そうだなともと思いました。

重労働ですよ。「鬼の棒」はどの行程もキツいんですけど(笑) 練るのも最後の方になってくるとホントに重たくなってきます。
―かなり体力が必要そうですね。

「鬼の棒」の時期はホント大変なんですよ。飴を作るのもそうだけど、炭の煙でクラクラするときもあって。連日やってると朝起きた時に「あれ? 飲んでないのに二日酔いかな?」ってくらい体が重いことがあります(笑)

この頃(1月末)は他のお菓子づくりを止めて、「鬼の棒」だけに専念する日を作るんよ。一日にさっきの行程(前編で紹介した一連の流れ)を7~8セットぐらい、ぶっ通しでやってね。
―そういえば、作業の途中でお菓子をつまんだりされていましたね。

メシ食う時間がないのよ(笑) あんまりえらい(疲れる)と途中で休憩とるけどね。そうすると炭が終わってしまって、部屋が冷めるけぇね。1日5セットとかだったら、もう続けてやっちゃう。