津田農園と「くりめし弁当」のおはなし 第3回

津田農園さんの「くりめし」インタビューの第3回! いよいよ最終回となる今回は、くりめしがいかにして「長門の定番メニュー」となったのか、そして長く愛される津田農園さんの商品から垣間見える農園のみなさんの思いに迫りました。「うまくないものは売らない」という農園の理念に込められた思いとは? ぜひ最後までご覧ください! (第1回はこちら

取材/撮影:村尾悦郎

 

くりめしが長門に定着するまで

―現在、くりめしは長門のみなさんの生活の中に定着していますが、それはどのようにして広がっていったのでしょうか?

▲「くりめし弁当」は市内のさまざまなお店で購入できる

 

民幸さん
民幸さん

昭和50年ごろから弁当を売り出したのですが、最初は、3つの弁当を仙崎の商店に持って行くことからはじめました。

 

―1日に3つですか?

民幸さん
民幸さん

はい。その日ごと、直接お店に出向いて、お願いして3つ買いとってもらって。「儲け」と言うには少ないですよ。だけど1ヵ月間、毎日毎日持って行きました。そうしたらその店の社長が「津田くん、来月から振り込みにしようね」と言ってくれて。

 

―お店のレギュラー商品に入れてもらえたんですね

民幸さん
民幸さん

そうなんです。今思えば、きっとその社長は1ヵ月間、私の人となりを見ていたんだと思うんです。そうして「こいつならちょっと付きおうてやってもええかな」と思っていただけた。そういったやり取りがいろんな所であって、だんだんと取り扱ってくれるところが増えていきましたね。

 

―農園のお仕事もされながらですよね。寝る間もない生活ではないですか?

民幸さん
民幸さん

それは……若かったからね(笑) そうして何年か経ったころにスーパーのように大きなお店とも取引がはじまっていったんですよ。

 

 

―今では、あのパッケージを見ただけで長門の人たちは「くりめしだ!」って分かるぐらい浸透していますよね

民幸さん
民幸さん

そういうものは少なくなっているかもしれませんね。今の時代はいろんな弁当の中身が見えて、見比べて選べるようになっています。反対にくりめしは巻紙で中身はまったく見えない。だけど、市内のみなさんは何が入っているのか分かってくださっていると思うんです。

 

―そうだと思います

民幸さん
民幸さん

それは長いことやってきたからこそのもので。これからも変えるつもりはないし、今も買ってもらえているということは「信頼してもらえるんじゃないかな?」とも思います。「中身が見えてないと不安」と思う人からは納得できない商品かもしれないですけど(笑)

 

―帰省して、街でくりめしを見ると「長門に帰ってきたな」と思う方もいらっしゃると聞きます

民幸さん
民幸さん

嬉しいですね。スーパーで、「くりめしを食べたい」って尋ねてくる人が盆と正月に増えるという話を私は聞いたこともありますよ。「これを食べたら帰ってきた感じがします」って。不思議ですよ。これほど食べ物が豊富な時代にね(笑)

 

―そういった長門の「くりめしファン」の方々について、どんな思いを持たれていますか?

民幸さん
民幸さん

長門市外の人にはちょっと異様な姿に映るかもしれないけど、そういった方々がいらっしゃることが、ここまで続けてこれた理由のひとつであると思います。ありがたいですね。

 

津田農園の「商品」とは

 

―くりめしが街に定着していると実感された出来事はありますか?

民幸さん
民幸さん

くりめしは、その日の午後になると売り切れることも多くて。だから遅くに来たお客さんが「いつも売り切れなんよね」と苦笑いしながら残念がられることがあるんです。それを私たちも残念に思う。でも、これは逆に考えたら「うちの弁当が関心を持ってもらえるようになったということだな」とも考えられるんですよ。

 

―確かにそうですね

民幸さん
民幸さん

「待っててくれる、期待してくれる」って分かるから、変なことはできませんね。「真面目にやっていく」ことは商売として当たり前なんだけど、それを続けるのは本当に難しいです。

 

―それを続ける、ご主人の気持ちはどこから来るのでしょうか?

民幸さん
民幸さん

それはね、「家族みんな」だからです。みんなでそういう気持ちになれているから、やってこれています。

 

―ご主人だけでなく、ご家族みんながお客さんと向き合って、良いものを作ろうと頑張ってこられた?

民幸さん
民幸さん

はい。私1人でやっているわけじゃないんですよ。私が病気した時は、妻が2倍仕事しなきゃいけない時もある。それができなかったら、もう続けられない。だからみんな同じ気持ちを共有することが大切なんです。

 

 

―そうして続けてこられたんですね

民幸さん
民幸さん

はい、うちは「うまくないものは売らない」と、宣言して商売しています。

 

ホームページにも書かれていますね

民幸さん
民幸さん

そう、「うちの商品はすべてうまい!」という横着な言い方に見えるかもしれないけど、そうではなくて、「譲れない気持ち」として言わせていただいているんです。家族みんなで、この思いは共有してきたと思います。

 

―その思いがあるからこそ、津田農園の商品が長門のみなさんに愛され続けているんですね

民幸さん
民幸さん

……もったいない言葉ですね(笑) でも、「モノ」と一緒にそこに込めた私たちの「気持ち」も買っていただくというか、お客さんに寄り添わせていただきたいと思っています。そうしてできたものが「商品」なのではないかと、そう思うんです。

 

―おいしさだけでなく、農園のみなさんの思いも商品の価値なんですね

民幸さん
民幸さん

そうです。秋の観光農園シーズンになったら「お前に会いに来たんよ」って来てくださるお客様もいらっしゃいます。お客様の購買欲を満たすだけじゃなく、うちの雰囲気に触れて、そこに価値を感じてくれたらなおさら嬉しいんですよね。こういう世の中だけど、そんな価値観もあっていいんじゃないかなと思います。

 

―そういった価値観はやはり伝わるものですか?

民幸さん
民幸さん

「伝わって欲しいな」って思いますね。モノを通じて、味や食感と一緒に、思いも届いて欲しい。だから果物やくりめしをはじめとした、いろんな商品を丁寧に作る。そうしてできた味を「おいしい」と思っていただけたら、その価値は大きいし、嬉しいですね。

 

 

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Information

■津田農園

直売所ではくりめし弁当だけでなく、シーズンごとに梨、栗、ぶどう、ベリー類の販売が行なわれているほか、農園ではフルーツ狩りも体験できます。詳細は公式サイトまで。

・住所:山口県長門市俵山1569
・電話番号: 0837-29-0406
・営業時間:9:00~17:00

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