芦田健介さんは、一家そろって2017年よりカナダから長門市の向津具(むかつく)地区に移住し、翌年にカフェ「NaNaya Farm」を開業。テラスからダイナミックな日本海の眺めが楽しめるこちらのお店では、芦田家の畑で育てた無農薬野菜を使った料理が提供され、向津具の新たな人気スポットとして話題を呼んでいます。東京でサラリーマンをしていたという健介さんがカナダでの生活を経て、なぜ長門にたどり着いたのか? 妻の祐子さんと一緒にお話を聞かせていただきました。
取材/撮影:村尾悦郎
カナダでの暮らし

▲芦田健介さん(左)と祐子さん(右)
―芦田さんご一家は、カナダから長門に移住してこられたとか?

そうですね。カナダのウィスラーという町にいました
―それまではどちらにいらしたんですか?

僕は元々広島出身で、カナダに行くまでは東京でサラリーマンをしてたんですよ
―ウィスラーには何年ほどいらっしゃったんでしょうか?

僕は14年、祐ちゃんは11年ですね。僕らは向こうで出会って結婚して、子供たちもそこで生まれています
―カナダに移り住んだきっかけはなんですか?

当時、東京での暮らしにどんどん疑問を感じてきていて。「このままでいいのかな」と悩んでいたんです
―「暮らしへの疑問」とは?

家と職場を往復する生活の中で、「満たされていない日々」が当たり前になっていって。「これじゃいけない」と強く思ったんですよ
―そこで生活を変えようと決心したんですね

はい、それで思い切って仕事を辞めて、カナダに行ったんです。山が好きで、スノーボードが好きだったから、その気持ちに素直になろうとしたんですよ。ウィスラーはウィンタースポーツの聖地みたいなところで、雄大な自然の中で思いっきり滑れるすごい土地でした

▲ウィスラーの冬景色1(写真:芦田さん提供)

▲ウィスラーの冬景色2(写真:芦田さん提供)

▲ウィスラーの冬景色3(写真:芦田さん提供)
―楽しそうですね

はい、本当にいいところでしたよ。そして、向こうの人の暮らしぶりに僕はすごく影響を受けました。みなさん、気持ちよく、楽しく暮らしていて
―「気持ちよく、楽しい暮らし」とはどのようなものですか?

まず、仕事はしっかりとやりつつも、休むときはしっかり休んで思いっきり遊ぶんですよ。自分の人生を謳歌している様子がすごくうらやましくて。「いいな、こんな風に生きていきたい」と、カナダの暮らしにのめり込んでいきました

▲ウィスラーでの芦田さん宅(写真:芦田さん提供)

▲夏場にカヌーを楽しむ様子(写真:芦田さん提供)

湖畔で焚火を楽しむ様子(写真:芦田さん提供)
―向こうのライフスタイルがマッチしたんですね

はい。そして、そんな生活の中で気づいたことがあって。向こうの人って、食べ物や環境にすごく気を使っているんですよ。「体に良いものを食べよう」とか、「環境に配慮したものを使おう」とか
―カナダの人たちはそういった意識が高いんですか?

はい、日本と比べてすごく気を使っていると思います。一般の人でも作物の農薬の使い方とかをすごく気にしていますし、日本でいう有機栽培の農家さんもいっぱいいて。スーパーに行くと有機野菜の専門コーナーが置かれていたり。そういった考え方に僕らもすごく影響を受けましたね
―そんな芦田さんが日本に戻り、長門に移住されたのはなぜでしょうか?

楽しくはあったんですが、今言ったように「体にいいものを食べたい」っていう気持ちが高まっていって、「自分の家と畑を持って、農のある暮らしをしたい」と思うようになったんです。そこを考えるとウィスラーでは難しいという現実にぶつかって
―なぜ難しかったんですか?

ウィスラーはリゾートの街なので、土地や物価がものすごく高かったんですよ。それでどうしようと悩んでいたんですが、ふと日本に目を向けたら「日本の方がやりやすいよな」って思って。そこから日本に帰ることを考えはじめました。

ウィスラーは環境が特殊過ぎたんですよね。リゾート地だったので毎年、まわりにいる人が変わったり、友達が訪ねてきてもすぐに帰ったり。そんな環境が「子供にとって良いことなのかな?」とは思っていたんですよ。日本にはそれぞれの家族もいるし、カナダで生まれた子どもたちに日本のことを教えてあげられるから、「日本に帰ることもいいな」って思ったんです
―やりたいことや家族のことなど、いろいろな要素が重なったんですね

そうなんです。理想の生活や景色を探して、日本に帰ってきました
■後編はこちら!
Information
■NaNaya Farm
・住所:山口県長門市油谷向津具上3994−3
・営業日:毎週木~日曜日
・営業時間:10:00~16:00