【アフターインタビューつき!】俵山の地域おこし協力隊・中野さんの退任報告会レポート

2019年8月30日(金)、長門市地域おこし協力隊・俵山担当の中野博文隊員が3年間の活動報告会を行ないました。中野さんは活動中、“見習いハンター中野”として、狩猟肉「ジビエ」の魅力や活用に関する話題を市内外にたくさん提供されてきました。ながととでは、そんな中野さんの協力隊としての最後の活動の様子をお届けします。

取材/撮影:村尾悦郎

 

地域おこし協力隊になるまで

▲会場となった「里山ステーション俵山」には、地元俵山の方はもちろん市内の各地域からもたくさんの方が訪れました

 

旧油谷町の出身で、地元の高校を出た後に大学進学のため上京。卒業後は俳優として活動していた中野さん。二十年以上の都会の暮らしの中でUターンを意識したのは、後にハンターの師匠となる俵山の増野さんとの出会いでした。

 

「目の前でさばかれた猪の肉を口にしたとき、自分の中で『命をいただくとはこういうことか!』と分かった。東京の暮らしでは想像がつかない世界だった」と、当時の衝撃を中野さんは語ります。それから「狩猟に関わりたい」という思いを抱くようになり、「俵山地区の地域おこし協力隊」募集をきっかけにUターンを決意。「俵山でジビエに関する活動をしたい!」と、2016年9月より着任しました。

 

まずは「解体」!

協力隊となった中野さんが最初に取り組んだのは仕留めた獣を食肉にする「解体」。増野さんが代表を務める「俵山猪鹿工房 想」で解体技術の取得に励みました。「まったくの素人からはじめましたが、『3年間で1番の成果はこれだ!』と、胸を張って言えます!」と中野さんは語ります。

 

 

▲中野さんの発表スライドショーより

 

このタイミングで「この人に出会ったから今、こうしてここにいます」と、中野さんが会場の皆さんに改めて増野さんを紹介。三年間の思いがこみ上げたのか、早くも中野さんの目に涙が。

増野さんは三年間を振り返り、「今の彼の解体技術は本当に凄いです。それに、報告連絡相談がバッチリな所が素晴らしい(笑) 何に対しても本気で取り組む彼と、これからも協力していきたい」とコメントされました。

 

ハンターになる!

解体と一緒に取り組んだのがハンター活動。狩猟免許や猟銃所持の許可を取り、地元猟友会の駆除隊に入隊し、俵山だけでなく市内各地域での狩猟に励みました。駆除隊の活動は単純に狩猟だけでなく、害獣被害に困る農家さんの助けにもなっています。

ハンター活動の様子は 「見習いハンター中野の俵山奮闘記」 として長門市地域おこし協力隊のFacebookページで発信。一般の生活であまり触れることのない「狩猟の世界」は好評を得ました。

 

▲中野さんの発表スライドショーより

 

けものみちPROJECT

▲中野さんの発表スライドショーより

続いて、「命を余すことなく使いたい」という思いから、それまでは廃棄されていた猪/鹿の骨や革を活用する「けものみちPROJECT」をスタートさせます。地元の作家と協力し、アクセサリーなどのさまざまな製品を作り、イベントなどに出店して販売を行ないました。この活動は徐々に認知度を高めていき、2019年7月からは、アウトドア総合メーカー「モンベル」の会員限定ショップでの販売もはじまっています。

 

▲けものみちPROJECTのメンバーと

 

イベント開催や協力

▲中野さんの発表スライドショーより

市内外のアーティストを中心に手作りの製品や屋台が出展するイベント「俵山MARKET」を行なったほか、俵山温泉を中心に地域の景色や食べ物を堪能するウォークイベント「ONSEN・ガストロノミーウォーキング in 長門・俵山」の企画・実施にも参加しました。

 

▲中野さんの発表スライドショーより

中野さんはこういったイベントへの思いについて「地元の人たちがチャレンジしやすい環境を作り、相乗効果を生み出していきたい」と語りました。

 

さまざまな生業

▲中野さんの発表スライドショーより

ジビエを中心として活動してきた中野さんですが、地元の方々とのふれあいの中で「ジビエだけでなく、地域の役に立つ活動を進め、それも生業の一つとしたい」という考えるようになります。そうした思いから、ドローンによる農薬散布、苗の育成(育苗)の手伝い、デマンド交通のドライバー、電気屋さんのアシスタントなど、さまざまな事業に入り込み、狩猟のシーズンオフ時の収入源として考えているそうです。

 

▲「『食べていけるのか?』という不安はあるが、地域の役に立ちながら生きていくことにやりがいを感じている」と語る中野さん

 

三年間の活動を振り返って

最後に、中野さんは語ります。

「日本の未来を考えると、成長のための消費はなくてはならない。でも、自分がやっていきたいのは、その消費を “循環” させていくこと。獲った動物を余すことなく使うなど、『まっとうに生きていく』ことを商売につなげ、生きていきたいです」

 

「僕は今、肉が自給できる環境に立ちました。俵山のおいしいお米ができる様子も見ていて、『自分の口に入るものがどこから来たものなのか?』が分かる。東京にいた頃にはこんな暮らしは送っていませんでした。そして、僕はこの暮らしを “豊か” だと感じるんです。俵山の人、長門の人たちは、それが当たり前に思うかもしれないけど、そんな生き方の魅力を外に向けて発信していくこと。それが僕の使命なのではないかなと思います」

 

 

「 “本当の豊かさ” ってなんでしょうか? 問いかけの中で、『長門市はこんなライフスタイル生きていけるんだよ』と、そのことを伝えながら、胸を張って生きていきたい。“見習いハンター中野” の旅は、まだはじまったばかりです!」

 

 

暖かい拍手の中、中野さんの報告会は幕を閉じました。

 

 

 

 

報告会を終えて

▲ちょっとお疲れの中野さん

おまけにもう一つ。報告会を終えて数日後に、中野さんに今の心境を伺ってみました。

 

―報告会はどうでしたか?
中野:なんとかできましたけど、出来としては60点ぐらいかな(笑)

 

―意外と低いですね。かなりバランスよく、聞きやすいプレゼンだったように思います
中野:やってきたことを全部詰め込むことは無理なので、自分の思いがしっかり伝わるよう、「直感的にわかりやすく」は意識しました。一番反省してるのは、 “本当の豊かさ” についてもっと話したかったなぁ……と。

 

―最後に話されていたことですね。では、ここでお願いします(笑)
中野:ハハハ(笑) つまり「ものすごく稼いで、都会に家を建てて暮らしている人」と、「そこそこの収入ですこしずつ自給自足しながら田舎で暮らす人」はどっちが幸せなんだろう? っていうことでね。

 

 

―それは……人それぞれですよね?
中野:そう。でも、今の日本ってまだまだ「お金を稼ぐ=豊か」っていう意識が強いように思うんです。「それだけじゃないな」って僕は思ったからこうして田舎に戻って暮らしている。それを発信することで、そこに僕のように気づく人が増えて欲しいなって。

 

―いろんな暮らし方と幸せの形の一つとして、中野さんのように「自給自足できることを増やす」というスタイルがあって、その波長が合う人に気づいて欲しい?
中野:はい。「みんなハンターになろうよ!」ってことじゃなくてね(笑) 都会ではお金を出して買っていたものが、自分で育てて手に入る。それができる土地が田舎にはいっぱいあるし、僕にはそこが輝いて見えるんですよね。

 

―任期が終わって、いよいよご自身の事業に本腰を入れられると思いますが、これからの展開について教えてください
中野:いやあ……正直、ちょっと疲れちゃったから今は何もしたくない(笑) ……したくはないけれども、やりたいことはたくさんあるので。まずはこれまでやってきたことをトコトン突き詰めていきたいですね。