“生きてる匂い”を感じながら、ゆっくりおしゃべり。「bliss point」のおはなし(第4回)

山口県長門市の油谷・宇津賀(ゆや・うつか)地区の立石(たていし)に、「海のそばのカフェ bliss point(ブリスポイント)」はあります。このお店で楽しめるのは、美しい海の景色やおいしいコーヒーだけでなく、お客さんたちと店主・遠矢美和さんが繰り広げる楽しい“おしゃべり”。遠矢さんの笑顔に誘われて、地元だけでなく県内外からも多くの方が訪れます。そんな遠矢さんに、大切な友達「ちぃちゃん」と共に歩んだお店作りの道、そして立石の方々との優しい交流のお話など、たくさんのエピソードを聞きました。

 

 

―開店した当初はどんな雰囲気でしたか?

遠矢さん
遠矢さん

はじめは北九州の友達もたくさん来てくれて。でもやっぱり遠いから、あまり頻繁には来れないですよね。だから暇な日もありました。そんな時に地域の駐在さんや宇津賀の郵便局長さんが心配して見に来てくれて。「お客さん来ましたか~?」とか(笑)

 

―地域で心配してくれる方が現れたんですね

遠矢さん
遠矢さん

「まさかこんな田舎にカフェができるとは思わんから心配になって。せっかくだから応援しますよ!」って言ってくれて(笑) それから近所のおじいちゃんおばあちゃんに声をかけてくれて、地元の方々が来てくれるようになりました。

 

―地域の人と接する仕事だから心強い味方ですね

遠矢さん
遠矢さん

そうなんです。それから、市役所にもいろいろお世話になったので完成の報告に行って。そしたら「すぐに広報に載せよう!」って言ってくれて、いろんなメディアから取材に来てもらえるようになりましたね。

 

―いろんな方々が心配してくれた結果、だんだんと知られるようになった?

遠矢さん
遠矢さん

そう。お隣のおばあちゃんのお話なんですけど、私は「お客さんが来るようになって騒がしくて困ってるかな?」って恐縮してたんです。そしたら「お客さんが来るようになって良かったね。心配しとったんよ」って言ってくれて。

 

―見守ってくださってたんですね

遠矢さん
遠矢さん

はい、「でもあんた、月木土しかやっとらんから、知らずに来る人がおるよ。あんたがおらん時には私がちゃんと言っといたから」とも言ってくれてね(笑) そうやって、皆が気にかけてくれて、「玉ネギいる?」「トマトいる?」って野菜も持って来てくれるようになって。「ああ、ひとりじゃないな」っていう時間が増えてきたんですよね。

 

―ちぃさんと作ったこのお店が、地域の方々とつながりを持ちはじめたんですね

遠矢さん
遠矢さん

そう。例えば私の知り合いが九州からきてくれた時に、地元の人たちが居合わせると「あんたどっから来たの?」って会話がはじまるんですよ。帰る時は「ゆっくりしていきなさいよ」って、もてなす側として迎えてくれたり。

 

―アットホームな雰囲気ですね

遠矢さん
遠矢さん

地域の人も「ここに来たら、いままで喋ったことのない人と話せるから楽しいわぁ」って言ってくれて。お子さん連れのお客さんが来ることもあるから「このお店はこんなかわいい子に会えるんかね!」って喜んじゃって。「私が抱っこしてあげるからごはん食べなさい!」とか、「そんな寒いところでオムツ替えなさんな。こっちに来いさん!」とかね(笑)

 

▲ゆったり、のんびり過ごせるので、子育て家族もよく訪れる

 

―なんだか親戚の家に遊びに来る感覚ですね

遠矢さん
遠矢さん

そう。地元の人も、「blissに来た」というよりも、「宇津賀地区や立石にお客さんが来てくれた」っていう気持ちで迎えてくれると思うんですよ。「ありがとう、気を付けて帰りいよ」とか、「道が分からんかったら私が道案内しちゃる」とかね。それこそスタッフのように(笑)

 

―それは、ご主人が目指す「地域の拠点となるお店」のコンセプトにもマッチしていますよね

遠矢さん
遠矢さん

確かに。そこまで意識したことはないんですが、「都会の人が珍しがって来るだけのお店にはしないように」と思っています。やっぱり地元の人が来てくれるお店にしたいですね。

 

―地域の方々はこのお店でどんな風に過ごされていますか?

遠矢さん
遠矢さん

お茶を飲んだり、ご飯食べたりしながら、よくおしゃべりしています。それこそ「親族の集まりですか?」っていうぐらい身近な感じで。知らない人同士でも、私がちょっと紹介しただけでバーッてしゃべり出して仲良くなって、次に会う約束とかしだしたり(笑)

 

 

―印象に残っている地元の方とのエピソードはありますか?

遠矢さん
遠矢さん

たくさんあるんですが、ある方が「私はお金を出してコーヒーをお店で飲む習慣はなかったから、わざわざあんたのお店では飲まないよ。だけど、あんたがここでお店をするなら応援する。ちゃんと見ておくからね」って言ってくれて。うれしかったですね。

 

―心配してくれているのが伝わりますね。

遠矢さん
遠矢さん

そんな人が、後で「ちょっと飲んでみようかな?」とも言ってくれたり、別の方は「僕、90やけど通ってるうちにコーヒーが好きになったよ」と言ってくれたりですね。地域の皆さんと言えば……私、このお店ができた時は47だったんだけど、この地域だと、「若手」に入るでしょ?(笑)

 

―そうだと思います

遠矢さん
遠矢さん

はじめ、私は「若さを生かして地域のみなさんの役に立ちたい!」って思ってたの。でもね、よく分からないくせに「庭に畑を作ろう!」と思ったら近くのおばあちゃんが「こうしたらええよ」って教えてくれたり、お店の看板を立てる時には「草で見えんやろうから刈っちゃろう!」とか……なんだか逆に心配の種をみんなに蒔いていくんですよ(笑)

 

―お世話されてますね(笑)

遠矢さん
遠矢さん

もう、本当に「役に立てる!」っていうのは思い上がりだったなって(笑) 「人って一人では生きていけないんだな。やっぱりみんなのおかげで生活できてるんだな」っていうことをあらためて実感しました。

 

―それにしても、皆さんパワフルで世話好きなんですね

遠矢さん
遠矢さん

そうなんです。私が困ってたら、それをみんなが面白がって「やっちゃろうか!」って(笑) いろんなことを経験してきたつもりだったけど、「生きる術を何一つ学んでなかったな」って思い知って。やっぱり人生の先輩たちがこれまで培ってきた経験や知恵はすごいです。

 

―お客さんとの交流がこのお店に変化をもたらすことはありますか?

遠矢さん
遠矢さん

たくさんあります! 最近だと「僕、ここにカブトムシ小屋を作りたいんだけど」という言葉をきっかけに「大きなカブトムシ少年」たちが集まって飼育小屋を作って。今はザリガニまでいるんです(笑)

 

▲常連さんが建てたカブトムシ小屋

 

▲小屋の中には何種類ものカブトムシやクワガタムシなど、たくさんの住人が暮らしている

 

―これは本格的ですね(笑)

遠矢さん
遠矢さん

そう。近くのおばあちゃんがひな人形を置いてくれたり、七夕飾りをしてみたり、「手作りのカバンがあるんだけど、ここで売ってみない?」って言われて置いてみたり。いろんな人がいろんなものを持ち寄って、お店が活気づいてるんですよ。

 

▲店内で売られている手作りのカバン。かわいい見た目にファンも多く、「飛ぶように売れていく」とのこと

 

―それも会話の中からはじまるんですか?

遠矢さん
遠矢さん

そうです。最近は近所のごみ拾いもはじめて。ただ拾うだけじゃなくて、「ご褒美」にひまわりを植えることにしたり。そしたら常連さんも一緒に拾ってくれて、「あんたがおらん時がは水まいちゃろう」っていう人が現れたりね。いろんな人が動いてくれることで楽しいことができるんです。本当にありがたいですね。

 

▲店の前で育てているひまわり

 

―完全に「お店とお客」を越えた関係ですね(笑)

遠矢さん
遠矢さん

多分、みんなが「自分の店だ」と思ってくれてるんですよ(笑) 私が許可しなくてもみんなが作っていくこともよくあるんです。「どうせ遠矢さんはOKするから」ってお店の2階を改修してくれたり(笑)

 

―「自分の店」ですか。すごく面白い関係性ですね

遠矢さん
遠矢さん

でも、皆さんとこうした関係性でいられるのは私だけじゃなく、ちぃの人柄があったからこそだと思うんです。ちぃを知っている人はここにくればちぃを思い出して、感じることができる。お店を作ることが自分の夢と、ちいの夢を叶えることでもあったんだけど、私一人の思いだけだったらお客さんたちがここまで共感してくれなかったんだろうなって思います

 

>>第5回:「ずっとおしゃべりしながら過ごしていきたい」

<<第3回:「ゆっくりして、人の温かさを感じれる場所

 

Information

「海のそばのカフェ bliss point」

●場所:山口県 長門市 油谷後畑 2237-6
●営業日:月・木・土
●営業時間:11:00~16:00
公式Facebookページ

※「海のそばのカフェ bliss point」は自転車用のラックや空気入れ、ワイヤーロックなどが設置された「サイクルフレンドショップ」です。詳細はこちら

▲人気メニュー「ビーフカレー」

▲日置のスイカを使った「suikaバー」(チョコチップのタネあり/タネなし)など、季節限定のメニューも用意されている