“生きてる匂い”を感じながら、ゆっくりおしゃべり。「bliss point」のおはなし(第2回)

山口県長門市の油谷・宇津賀(ゆや・うつか)地区の立石(たていし)に、「海のそばのカフェ bliss point(ブリスポイント)」はあります。このお店で楽しめるのは、美しい海の景色やおいしいコーヒーだけでなく、お客さんたちと店主・遠矢美和さんが繰り広げる楽しい“おしゃべり”。遠矢さんの笑顔に誘われて、地元だけでなく県内外からも多くの方が訪れます。そんな遠矢さんに、大切な友達「ちぃちゃん」と共に歩んだお店作りの道、そして立石の方々との優しい交流のお話など、たくさんのエピソードを聞きました。

 

―そうして、学校の先生としてお仕事されていた遠矢さんが、このカフェをはじめたきっかけはなんですか?

遠矢さん
遠矢さん

高校生からの付き合いで親友の「ちぃ」っていう子がいて。中学校の英語の教師だったんですけど、ずっと元気印だった彼女から「私、すい臓がんで、末期なの。肝臓にも転移していて手術はできない」って連絡が来て。

 

―分かった時にはもうその状態だったんでしょうか?

遠矢さん
遠矢さん

はい。彼女は教員だったから毎年人間ドックもやってチェックは受けていたはずなんだけど、無理をしやすい性格でもあって、気づいた時にはもうそうだったみたいです。それでも、彼女には子供が3人いたから「私は絶対に生きる!」って言っていて。

 

―気丈な方ですね

遠矢さん
遠矢さん

そう。それで私がお見舞いにいって、「ちいちゃん、人生で先生以外にやりたかったことある?」って聞いたんです。そしたら彼女が「カフェがしたかったな~」って言っててね。彼女はカフェ巡りが趣味で、忙しい時でもいろんなカフェに行ったりしていて。

 

▲写真左がちぃさん

 

―その言葉がきっかけでこのカフェがはじまるんですか?

遠矢さん
遠矢さん

そうなんです。私も「60歳で退職したら一軒家を借りて、お店をやってみたい」と考えていて。「私がこの夢を叶えれば、ちぃの夢も叶うな」って思ってね。教員も講師としてのお仕事だったから、一旦辞めたとしても戻れるし、ちょうど主人のお店も安定しはじめていたので「これはチャンスだ!」と。

 

―いろんな条件が揃っていたんですね

遠矢さん
遠矢さん

そう。それでちぃちゃんに「私、仕事を辞めて60歳の夢を今叶えるから、ちぃの夢も一緒に叶えよう!」って言ったんです。それが2015年にスタートしました。

 

―そうしてお店の計画がはじまるわけですね

遠矢さん
遠矢さん

はい。私とちぃちゃんは高校の時からの付き合いなんだけど、これに「がっちゃん」と「あっこ」っていう子を加えた4人組がずっと友達で。この4人がまた「ガシッ!」と固まって、お店作りがはじまるんですよ。

 

―お店の場所を探す時に、条件はあったのでしょうか?

遠矢さん
遠矢さん

まず、ちぃちゃんは海が好きだから「絶対に海の近くにしようね」って話しました。私は古民家カフェをしたかったから「一軒家」ということと、私がオーナーとして費用を出すこと。それで九州から山口まで海沿いを7ヶ月かけて探し回ったんですよ。

 

―かなり探されたんですね

遠矢さん
遠矢さん

大変だったんですよ。そのうちにちぃちゃんの病気も進むし、お金も無くなるし。どうしようって途方に暮れていた頃に、北九州の教員時代に知り合った安岡先生という方を訪ねたんです。安岡先生は油谷にも家を建てて、二拠点生活を送られていて。そこにお邪魔しました。

 

―ここではじめて長門とつながるんですね。

遠矢さん
遠矢さん

はい。二人で海を見ていたら、ちぃが「ホントに素敵な場所だね。この海を見てたら死なない気がする」って言ってて。その言葉を聞いて私言ったんです。

 

―どんなことを言われたのでしょうか?

遠矢さん
遠矢さん

「ちいちゃん、私もうこれ以上物件を探しても自信がないの。長門市は空き家があるそうだし、こんなにきれいな海のある町に決めて探してみない? 小倉からは2時間かかるけど長門でいい?」って聞いたら彼女も「長門がいい!」って言ってくれて。

 

―そうして長門に決まったんですね

遠矢さん
遠矢さん

はい。それから市役所に相談して、色々見させてもらってね。ここは2軒目だったんです。坂道だし、道も細いし、来た時には草ぼうぼうで、「ここでカフェ?」って私はちょっと迷ったんだけど(笑)

 

▲改修前の物件の様子

 

―それでも、ここに決めたのはなぜですか?

遠矢さん
遠矢さん

ちいちゃんが「ここいいじゃん! 海の香りが生きてる! “生きてる匂い”がするよ」って、すごく気に入ってくれてね。それで決めました。

 

―そこからはどんな風に進んでいきましたか?

遠矢さん
遠矢さん

それから大家さんと交渉をはじめたんですけど、ちょうど本格的に改装計画を練ろうとした時に連絡が来て、「大工さんに見てもらったら、2階がいずれ雨漏りしそうで、修繕にかなりお金がかかりそうなの。遠矢さん、申し訳ないけどこの話はなかったことにして」と言われてね。

 

―一度断られたんですか?

遠矢さん
遠矢さん

そうなの。でも、「親友ががんで、私たちには時間がないから絶対に貸してください!」って頼み込んでね。そうしたら「分かった。じゃあ好きに使いなさい。無理だったら諦めてもいいから」って言ってくださって。

 

―事情を分かってもらえたんですね

遠矢さん
遠矢さん

はい。その後、偶然、大家さんの旦那さんが私の出身大学の教授で、私が教わった先生とも友達だったことも分かって。大家さんが「家賃、苦しい時は入れなくてもいいよ」とまで言ってくれるようになって。私は私で「いや、絶対に払います!」って言ったりね(笑)

 

―うねりのようなつながりがありますね

遠矢さん
遠矢さん

でしょう? まだあるんですよ(笑)

 

―どんなつながりですか?

遠矢さん
遠矢さん

改装計画中もここに何度も足を運んでいたんだけど、その時はここの立石地区の方々との交流はほぼなかったんですよ。そんな時ちょうど市役所の担当の方に「近くに門司からの移住者がいますよ」って教えてもらって。

 

―その方と何か関係があったんですか?

遠矢さん
遠矢さん

はい、私が事務員の時代に岡山さんという職員さんがいてね。「僕ね、退職したら妻の実家がある『油谷』っていうところに移住するつもりなんだ」って、当時、教えてもらってたの。

 

―まさか

遠矢さん
遠矢さん

それから何年か経ってたんだけど、私がここにきて“門司から移住してきた”という人の新築の家の表札をみたら……「岡山」って書いてあって(笑)

 

 

―すごいですね!

遠矢さん
遠矢さん

訪ねてみたらホントにその岡山さんでね! 岡山さんも「なんで遠矢さんがここにいるんだ!?」ってビックリされて(笑) それから岡山さんづたいに地区のいろんな人を紹介してもらって、段々と顔見知りになっていきました。

 

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Information

「海のそばのカフェ bliss point」

●場所:山口県 長門市 油谷後畑 2237-6
●営業日:月・木・土
●営業時間:11:00~16:00
公式Facebookページ

※「海のそばのカフェ bliss point」は自転車用のラックや空気入れ、ワイヤーロックなどが設置された「サイクルフレンドショップ」です。詳細はこちら

▲人気メニュー「ビーフカレー」

▲日置のスイカを使った「suikaバー」(チョコチップのタネあり/タネなし)など、季節限定のメニューも用意されている