“島が好き、人が好き、仕事が好き” 国王が語る、青海島共和国の建国物語 ~後編~

名物その2、「国王の塩辛」

―「共和国」って、代表は普通「大統領」だったりすると思うんですが、なぜ濱野さんは「国王」なんでしょうか?

濱野国王
濱野国王

アハハ(笑)。共和国で作っている商品で「国王の塩辛」があるでしょう。

▲青海島共和国名物「国王の塩辛」(道の駅「センザキッチン」にて)

▲青海島共和国名物「国王の塩辛」(道の駅「センザキッチン」にて)

 

―ありますね。

濱野国王
濱野国王

商品名を考えていた時に、「共和“国”やから『国王の塩辛』にしようか」って冗談で言うたんです。そしたら居合わせた市の職員が「ええやないですか! それにしましょう!」って面白がってね(笑)。だから私は大統領にならなかったの。

 

―では、「国王の塩辛」という商品名が先にあって、濱野さんが「国王」になったと?

濱野国王
濱野国王

そう。「大統領の塩辛」よりは「国王の塩辛」の方が語呂がえかろうと思ってね(笑)。

 

―「国王の塩辛」を商品化したきっかけはあるんでしょうか?

濱野国王
濱野国王

共和国のメンバーでね、親父さんがカンカラ部隊(※)やった人がおって。余ったイカを塩辛にしてて、それをもらったらうまくてね。「これは一つ商品にしようか」という話になったんですよ。

(※)カンカン部隊のこと。仙崎港で仕入れた鮮魚を、ブリキの箱(カンカン/カンカラ)に入れ、JR山陰本線や美祢線で輸送しながら売り歩いていた人たちを指す

 

―「国王の塩辛」が商品化したのは共和国が建国してすぐですか?

濱野国王
濱野国王

そうねぇ、2年目ぐらいやったと思います。

 

―「国王の塩辛」の売り上げはどうされているのでしょう?

濱野国王
濱野国王

国の運営資金に回しています。作るのはみやすい(簡単な)ことではなかったけど、今では大きな財源になっちょるからね(笑)。国のヒット商品ですよ。

 

―塩辛以外にも商品の開発はされていますか?

濱野国王
濱野国王

今は「第二の塩辛」になる商品を作ろうと思って、ゼリーの開発に取り組んでますよ。

 

▲「国王の甘酒ゼリー(仮)」の試作品。甘酒で作ったゼリーに夏みかんがたっぷり入っている

 

▲甘酒ゼリーのパッケージ案。文字は国王の直筆

 

―今、国の主な財源は塩辛ですか?

濱野国王
濱野国王

うん、それと、体験の受け入れね。あと年末年始の餅の販売もありますね。

 

―体験には外国の方も来られてますよね

濱野国王
濱野国王

はい、この間はカルフォルニアからのお客さんと、インドネシアの人も来たりね。いろんな国の人がきますよ。

 

 

共和国のこれから

―ちなみに国王は今、おいくつですか?

濱野国王
濱野国王

83歳になります。

 

―最初の自治会から数えて、国王の活動は何年になりますかね?

濱野国王
濱野国王

おおかた40年ぐらいやろう。人生の大半いね(笑)

 

―その中で、一番思い出深い出来事はなんですか?

濱野国王
濱野国王

私が「廃校になる小学校を拠点にして、島を元気にしていく活動をしていく組織を立ち上げたい」と、有識者に相談したんです。

 

―共和国を立ち上げる前ですね。

濱野国王
濱野国王

はい。そしたらその人は「濱野さん、そりゃあ、やめちょったほうがええ! 変な組織立ち上げても、にっちもさっちもいかんようになって、あんたは海に身投げするようになるからやめちょきさん!」って言われたの(笑)

 

―それは辛辣ですね。でも、こうして続けていらっしゃいますよね?

濱野国王
濱野国王

そう。こうして身投げをせんでな(笑)。毎年、たくさんの人が来てくれて、楽しんで帰ってくれるから嬉しいですよ。その人とは今も飲み友達だしね。

 

―辛いことはありますか?

濱野国王
濱野国王

どうしても人の手を借りんにゃいけん時もあるからね、そういう時に、行き違いがあって、お互いに困ったりすると辛いね。それから、体験を受け入れた時は体験料から日当を払うこともあるんやけど、共和国には収入のないイベントもあるからお金が払えんこともあって。そういう時は申し訳ないなって思います。

 

―いつも国王はここにいらっしゃるんですか?

濱野国王
濱野国王

うん、ずっとおる。元旦もおるで(笑)

 

―そうですか(笑)。年末年始もいろんな行事がありますからね。

濱野国王
濱野国王

年末にやる正月用の餅つきやら高山の元旦登山やらね。

 

―今、何か困っていることはありますか?

濱野国王
濱野国王

それは後継者やね。

 

―二代目の国王ということですか?

濱野国王
濱野国王

そう。それを見つけるのが難しいと思うんよ。人が見つかっても、私みたいに毎日ここに出れるとは限らんしね。

 

―国王が思う、青海島の魅力ってなんですか?

濱野国王
濱野国王

やっぱり「人」やろうと思います。ちょっと閉鎖的な所もあるけど、「みんなで助け合おう」という気分が強くて、それがいいなと思うてます。あんまり争いごとするような人はおらんしね。

 

―「閉鎖的」というのも「シャイ」な感じでしょうか?

濱野国王
濱野国王

そうやね、青海大橋ができるまでは長いこと渡し船で行き来する土地やったから。そういうところもあると思うよ。

 

―では最後に、今後の共和国の展望を聞かせてください。

濱野国王
濱野国王

共和国も自立しようとしていて。市の補助をなくして、青海、大泊、大日比の3地区それぞれから助成金をもらっていたんだけど、それも今度からなくして。次は逆に共和国で上げた収益を3地区に配分したいと思っています。そこまで行くのが夢ですね。

 

―それは、商品の開発だったりということですか?

濱野国王
濱野国王

うん。塩辛をはじめとして、ここで生産したものをもっといろんなところで売って。ここで雇用を増やしていきたいっていうのも……本当に夢ですよ。死ぬるまでにできるようになるのかは分からんけど(笑)

 

―その思いと、国王の行動力はどこから来るのでしょうか?

濱野国王
濱野国王

そうねぇ……自分でも分からんけどね……好きなんよ、島と人と仕事が。

 

―「好き」という言葉に重みがありますね。

濱野国王
濱野国王

島が好き、人が好き、仕事が好き。本当にね。でね、まあ、私がこういう仕事に向いちょるんじゃろうな。続いちょるからね(笑)

 

■前編はこちら