“工夫しつつ、喜び生活する” Coffee&Roaster Yamaのおはなし ~前編~

山口県長門市の俵山温泉街のそばに、週末限定で営業するコーヒーショップ「Coffee&Roaster Yama」があります。「Yama」は、俵山の澄んだ空気の中で、店主の小坂さんが焙煎するおいしいコーヒーを楽しむことができ、市内のみならず、県内や県外各地からもお客さんが集まる人気店。同じ建物には小坂さんの妻・ゆかりさんが営む焼き菓子店「ユーカリとタイヨウ」もあり、双方のファンでにぎわいを見せます。静岡から移住し、長門市の地域おこし協力隊を経て「Yama」を開業した小坂さん。今回はそんな「Yama」と小坂さんのお話をお届けします。

取材/撮影:村尾悦郎

移住と地域おこし協力隊

▲Coffee&Roaster Yama店主・小坂保成さん

―まず、コーヒーのお店をやろうと思ったきっかけを教えてください。

小坂さん
小坂さん

元々、コーヒーは好きだったんです。長門に来る前は静岡県で公務員として働いていたんですが、その頃から「コーヒーのお店をやりたい」という思いがあって。妻は当時から焼き菓子店をやっていたから、一緒にカフェをやりたいと思ってたんです。それは移住してくる前から決めていたかな。

 

―移住を決めたのはいつでしょうか?

小坂さん
小坂さん

東日本大震災の後、妻と話し合って移住を考えはじめ、2013年の8月に、僕と妻と息子の家族3人で長門市に移住してきました。

 

―長門は縁のある街だったんですか?

小坂さん
小坂さん

いえ、まったくなかったです。でも、妻の親戚の家が宇部にあるので、数年に1度ぐらいのペースで山口県には来ていました……「長門っていう名前は知らないけど千畳敷には行ったことがある」ぐらいだったと思います(笑)

 

―どういったいきさつで長門を知りましたか?

小坂さん
小坂さん

移住先を探している最中に、たまたま長門の「移住お試しツアー」の参加者募集を見つけて。それに参加した縁から、俵山地区担当の地域おこし協力隊に入りました。

 

―俵山が気に入ったんですね。

小坂さん
小坂さん

そうですね。ツアー中に俵山を回って、ここの物件を見つけてね。「ああ、いいね!」って。その後、協力隊に入って、仕事をしながら建物を改修しはじめたんです。片付けの時は地域の方や市役所の方、いろんな人が手伝ってくれたりして本当に助かりましたよ。

 

▲現在のお店の様子。左のスペースが「Coffee&Roaster Yama」で、右が「ユーカリとタイヨウ」

 

―はじめにユーカリとタイヨウのお店づくりをされていたんですか?

小坂さん
小坂さん

はい、まずそちらからはじめました。お店を片付けた後、大工さんに入ってもらいつつ、床材を調達して張り替えたり。

 

―協力隊だから、他の活動もやりながらですよね。

小坂さん
小坂さん

そうなんですよ。大羽山の交差点に「ようこそ!俵山へ」の看板を作ったり、農場の整備やったりとか、とにかく大変でした(笑)。ユーカリとタイヨウは2013年11月から工事をはじめて、2014年の5月にオープンしました。

 

▲小坂さんが協力隊時代に企画して立てた大看板(俵山・大羽山の交差点にて)

 

店舗づくりと研究の日々

 

―そして、いよいよご自身のコーヒー店にとりかかるわけですね。

小坂さん
小坂さん

倉庫だった所の床を剥がして、打ちなおして、壁も剥がして、屋根もはぐって、床を塗ったり、扉を付けたりね。

 

▲Yamaの店舗スペース工事の様子

 

―それをご自身一人でやられたんですか?

小坂さん
小坂さん

いえいえ、友達の大工さんや水回りは専門の業者さんにお願いしながらです。もちろん、僕がやった部分もありますけどね。倉庫を修理したタイミングで、子供が遊べるコミュニティスペースとして無料開放したりしながら進めていきました。

 

―それと同時に、コーヒーの勉強もされていたんでしょうか?

小坂さん
小坂さん

はい、お店をやるならいろんなこと聞かれるし、勉強したくてコーヒーマイスターの資格を取りました。

 

―お店の機材も揃えながらですか?

小坂さん
小坂さん

そうです。まず福岡の自家焙煎珈琲店で焙煎方法を学ばせていただいて、店舗がある程度完成してから焙煎機を買いました。後は、ひたすら焙煎して操作方法を身につけて、機械自体の癖を把握したりと……その頃はもう協力隊の任期が終わって、バタバタしながら開店の準備をしていきました。

 

▲店内に掲げてあるコーヒーマイスターの認定証

 

―機械の “癖”というと?

小坂さん
小坂さん

機械の設定を同じにしていても、温度や湿度など、その日の条件で豆の焼け方が変わるんですよ。でも、プロだったら、どんな条件で焼いてもすべて同じ状態になるように焼けないといけない。だから設定を変えながら何度も何度も焼いて、「この場合はこうなる」っていうのを覚えていったんです。

 

▲こちらがYamaの焙煎機。小坂さんはこの焙煎機の「デザイン、サイズ感すべてが大好き」なのだとか

 

▲焙煎機で焼いたコーヒー豆。レバーを上げると、煙と共に勢いよく豆が飛び出す

 

―まさしく「研究」ですね。

小坂さん
小坂さん

そう、僕の場合は数字を記録しながら、とにかく反復することで身につけていきました。コーヒーのグラム数に対して、どのぐらいの火力で、どのぐらいの時間焼くのか。それを夜中までとことんやる日々が続いて、本当に大変だった(笑)。でも、それがあるから今、焼いている時の香りの変化や豆のはぜる音、ドラムの中で回転する豆の音……いろんな要素から、焼き上りを予測できるんです。

 

▲小坂さんの研究ノート。びっしりと刻み込まれたデータに試行錯誤の様子が伺える

 

―すごいですね! 淹れ方もかなり試行錯誤されたんでしょうか?

小坂さん
小坂さん

はい、焙煎と同じく、いろんな淹れ方を全部データに取っていきました。そうして味を決めた後、いろんな工程をだんだんと単純化していくことも試していって。

 

―同じ味を、より手際よく作るということですか?

小坂さん
小坂さん

そう。より効率的に機械を使って、豆の良さをどうやって引き出すか、それをひたすら突き詰めるんです。